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平成13〜15年度科学研究費補助
母語の持つ抑揚情報の獲得における聴覚障害の影響に関する研究
平成19〜21年度科学研究費補助
軽度障害を伴う聴覚障害児の実態とその指導法に関する研究


 
科学研究費補助金(13610653)報告

母語の持つ抑揚情報の獲得における
聴覚障害の影響に関する研究

研究代表者 M田豊彦(東京学芸大学)

研究協力者 千葉喬史(都立立川ろう学校)
田中秀征(東北大学大学院)
荒川早月(都立大塚ろう学校)
佐々木礼(世田谷区立駒込小学校)
菊地淳子(東京学芸大学)
佐藤由理(東京学芸大学)
火石晶子(東京学芸大学)
絵野澤舞子(東京学芸大学)
星川育子(東京学芸大学)
佐々木しのぶ(東京学芸大学)

人は、通常母語を聞くことにより自然に言語を獲得していく。ところが、重度の聴覚障害があると言語の自然な獲得は困難で、教育的意図を持った早期からの活動を通して音声コミュニケーションや手話、読み書きを獲得・習得していくことになる。教育的意図を持った活動の中では用いられることば(音声言語)は、書き言葉への移行を考慮し地域コミュニティに根付いた方言ではなく、標準語が用いられることがほとんどである。したがって、重度聴覚障害児の場合方言で会話できると言うことは、無意図的な話しかけの中から言語獲得をしていると判断できる。

今日の聴覚障害児教育では、手話の再評価や人工内耳の進歩とも相まって、個々に応じたコミュニケーションモードの選択が重要な課題となっているが、そのための客観的指標を得るための研究は少ない。そこで、本研究では聴覚から自然言語として言語獲得していく指標として、書記言語を介しては獲得の困難な韻律情報や方言語彙の活用をとりあげ、以下の検討を行った。

(1) 聴覚障害児の発話における抑揚情報に関する検討
(2) 聴覚障害児の韻律的情報の聴取能力の検討
(3) 二者択一課題による韻律情報の聴取弁別力の検討
(4) 聴覚障害児の韻律情報の発話弁別力の検討
(5) 聴覚障害児の方言の活用に関する検討

本報告書は平成13〜15年度の研究結果を示したものである。研究の実施にあたっては多くの学校の子ども達先生方の協力を得ました。ここに感謝申し上げます。

2004年2月

研究報告書 (PDF 1MB)


 
科学研究費補助金(19530864)報告

聴覚障害児への発達障害チェックリストと
教員の印象評価との比較検討

研究代表者 M田豊彦(東京学芸大学 教育学部)

研究分担者 藤野博 (東京学芸大学 教育学部)

研究協力者 大鹿綾(東京学芸大学大学院連合学校教育専攻)
近藤史野(東京学芸大学大学院教育学研究科)
濱崎久美子(愛育会 金町学園)
荒川早月(都立大塚ろう学校)
臼井なずな(都立大塚ろう学校)
下谷喜美子(都立大塚ろう学校)

「9歳の峠」ということばが示すように、聴覚障害児には言語や抽象的思考において発達に困難を示す者がいることが指摘される。しかし聴覚障害児の言語や社会性の発達は個人差が大きく、全てが困難を示すわけではなく年齢相応の言語発達等を示す者もいる。近年の手話や人工内耳を活用した教育においても、年齢相応の発達を遂げる群と停滞する一群があることが明らかになっている(Greag,R 2006)。これまで聴覚障害児教育においては言語指導が重要な領域となってきたが、停滞する一群の認知特性や注意などに関して焦点が当てられることは我が国ではほとんどなかった。

アメリカでは指摘があるように(ASHA 1984)、言語発達に困難を示す聴覚障害児の中にはいわゆる発達障害(学習障害、ADHD、高機能自閉症等)を併せ持つ者が通常児以上の高い率で一定規模でいると考えられる。しかし、発達障害ゆえの読み書きの困難や行動上の不適応は聴覚障害によっても引き起こされることがありその鑑別に困難がある。それ故、日本の聴覚障害児教育の130年の中で発達障害を併せ持つ事例に関する研究が行われることがなく見逃してきた課題となっていた。

近年、人工内耳の早期からの活用が音声言語能力の獲得に有効であるとの知見がもたらされてきているが、その中にあって、聴力は改善したにも関わらず期待された言語力の獲得が困難な事例についての研究が散見されるようになってきた。また、手話を聾学校幼稚部段階から積極的に導入するようになり、手話コミュニケーションの能力から見て書記言語の習得が極端に遅れる事例について発達障害の可能性について我々は報告を行ってきた。しかしながら、教育現場の理解はまだ十分とは言い難い。そこで、本研究では以下の4点を柱として、研究を進めていくこととした。

1)聴覚障害児の中にいわゆる発達障害を併せ持つ子どもが、どのくらいの比率で存在し、現在どのような教育支援を受けているのかについて、聾学校だけでなく難聴学級も含め全国の実態を明らかにすることを第一の目的とした。

2)また、1)の全国実態調査を基に、発達障害合併事例の類型化を行うと共に、各タイプの困難状況を明らかにすることを第二の目的とした。

3)2)の類型化研究で得られた知見を基に、そのタイプごとの典型事例を抽出し継続的な教育支援による効果と変容をまとめることを第三の目的とした。

4)発達障害をともなう聴覚障害児への早期介入を目的に聴覚障害児の音韻意識の発達との関連から、発達障害様の困難事例の抽出を試みることを第4の目的とした。

本報告書は平成19年〜21年度の成果を示したものである。研究を実施するにあたり、多くの子どもたち先生方に協力をいただいた。ここに感謝申し上げます。

2010年3月

研究報告書 (PDF 3MB)
 

 

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