2012年、文部科学省は通常小中学校を対象に、「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」(以下、第二回全国調査)を行った(文部科学省,2012)。結果、6.5%に発達障害様の著しい困難があるとされ、10年前に実施された「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」(文部科学省,2003)に比べ0.2ポイント増加していた。また、特別支援教育制度の施行から6年経過したこともあり、教員の認識や様々な取り組みが高まっていることが示された一方、個別のニーズに合わせた支援については未だ十分に行われていないケースも少なくないという課題も示された。
我々は、文部科学省調査(2003,2012)と同様のチェックリストを用いて、平成23年度に聴覚特別支援学校(以下、ろう学校)を対象として「発達障害を併せ有する聴覚障害児に関する調査」(以下、第二回ろう学校全国調査)(執筆中)を行った。チェックリストの結果から「学習面」または「行動面」に著しい困難を示す児童は37.4%であった。また、教員の印象評価として「対象児に発達障害があると感じられる」としたものは27.7%と、第一回ろう学校全国調査(濱田・大鹿,2010)と比較し、10.1ポイントと大きく上昇しており、ろう学校においても発達障害に関する認識、理解が広まってきたことが示唆された。しかし、一方で聴覚障害と発達障害を併せ持つ児童の実態像は未だ十分には明らかにされておらず、教員の印象評価とチェックリスト結果に相違が生じるケースも少なくなかった。
そこで、本研究では第二回ろう学校全国調査の結果を基に、教員の印象評価とチェックリスト結果の一致度の分析、及び相違があったケースについての追跡調査を行った。
目的
第二回ろう学校全国調査の結果(研究1−1)から、教員の印象評価とチェックリスト結果の相違の原因を分析することで、聴児用のチェックリストを聴覚障害児に用いる際の改善点や留意点、発達障害のある聴覚障害児特有の特徴を明らかにすることを目的とする。